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児童学コラム

つながりながらジリツする:家族の根っこ編

執筆者:稲垣綾子(教員ページへ
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皆さんは、木の根っこが地中でつながっているのを知っていますか?
竹やぶに入ると、縦横無尽に根が張りめぐらされていて、しかも、その根がとっても強靭なので、傾斜面では階段のようなステップとなり、ひょいと登れてしまうくらいの安定感や生命力を感じることができます。
さらに森林にいくと、異種の木同士でも根っこでつながり、片方が切り株になっても生き続けるのを支えているのだそうです。夫婦や親子といった家族の関係性を深めるプロセスと、どこか似ているなと思うこの頃です。

私が専門にしているのは、家族臨床心理学です。とくに、思春期・青年期の時期(ティーン期)の子どもたちとご家族への心理支援に関わってきました。いわゆる第二次性徴を迎え、身体とこころが子どもから大人へとなりゆく時期に、ティーン期の子どもたちは自分のこころのアンテナが向く世界に一人没頭してみたり、同年代の友達とのおしゃべりなど時間を忘れて楽しんだりします。それが、大人世代とのあいだの境界線をつくり、ときに大人にはワカラナイ、ティーンたちの領域や世界がおのずと切り拓かれていくのです。

一方、大人からすると、それは喜ばしい成長であると同時に、子どもの部分も持ち合わせるティーンとの事柄について判断がなかなか悩ましい、と感じる時期でもあります。“もう思春期だから”という理由で、未成年のティーンに「何でもお任せ」するワケにもいきません。かといって、がんじがらめに親や大人の期待や考えで押しすすめるのも、ティーン自身が人生路を歩んでいくことへの後押しにつながらないかもしれない、とその匙加減に迷うことになります。

そして、物事を判断し、法的責任を引き受けていく大人の時期が近づいているティーンも、表向きは何も感じていないようにみえて、実はどうしたらいいかわからない不安を抱えている場合もあります。けれど、そのこと自体を言葉にできなかったり、これまでの経験から素直に伝えることへの抵抗を感じ、反抗的になったりする場合もあり、大人とあいだで対立しがちです。

こうした緊張のはらむ時こそ、冒頭の“つながりの木”をイメージするとよいでしょう。私たちは、地上ではそれぞれ独立した一本の木でありながら、地中では根を張って、他の木の根とつながりながら、ジリツしているのです。ティーンの木はまだ大きくはないかもしれませんが、確実に根を張って、伸びていこうとします。そのためには、地上での酸素だけでなく、地中からの水や栄養素が欠かせません。

このような、子どもから大人になりゆく時期のジリツを支えるつながり方を考えていくために、私は「アタッチメント」と「家族療法・家族支援」というレンズを通して、日本の文化に合わせた支援プログラムの研究と実践をしています。このつながりの関係は、私たちが生き延びていくために必要なものであり、さまざまな発達の領域のセーフティネットになることが明らかになっています(Bowlby, 1977; Moretti, 2020)。

そして、同時に、社会システムとも密接に連動している家族への支援にも目を向ける必要があります。めまぐるしく変化し、一歩先も読みにくい昨今だからこそ、次世代の子どもたちに関わる養育にも、不安が音を立てて迫ってくることがあるでしょう。だからこそ、私たちの根っこのつながり=“根本”は何かを考えていくことが一層大事になっていくのだ、と思っています。

参考文献

Bowlby, J. (1977) The making and breaking of affectional bonds, British Journal of Psychiatry 130:201-10 (ボウルビイ母子関係入門 第7章,作田勉監訳,1981年,星和書店).
Moretti, M. (2020) Connect: Parents and Caregivers, An Attachment Based and Trauma Informed Program for Parents and Caregiver, Simon Fraser University(Connect(コネクト):親と養育者を対象としたトラウマインフォームド・アタッチメントベースドプログラム日本版,稲垣綾子翻訳,2025年,未公刊).