幼児期に「異なる文化に触れる」ことの意義
皆さんは、これまでの人生でどのくらい海外文化の影響を受けているでしょうか?
私自身、幼児期に1年間、スウェーデンで過ごした経験があり、また約3年半、現地で保育者として働いた経験があることから、スウェーデンの文化に大きな影響を受けてきました。
スウェーデンは、移民を多く受け入れている多国籍国家で、母国語が約200種類あるといわれています。
そのため、就学前学校(日本の保育園、こども園、幼稚園)では、多国籍文化保育の環境が整っています。
例えば、世界地図と多国籍の簡単な言語で「こんにちは!」「さようなら!」を壁に掲示したり(写真1)、子どもや養育者の名前を母国語で記載したりと、子どもたちや保育者、養育者が、子どもたちの背景や文化を日常的に把握することが出来ます。
学校で使用する言語は、基本的にスウェーデン語ですが、移民の子どもと養育者との対話に、彼らの母国語を話せる保育者や通訳がつくように積極的に支援を行っています。
遊びにも、多くの工夫がされています。
例えば、物的環境の工夫として、お人形の種類が多かったり(人種に対応)、おままごとコーナーにさまざまな民族衣装(サリー、浴衣、チャイナドレス等)があったり、壁面にさまざまな食文化の感じられる絵(カレー、寿司、パスタ、ピザ等)が掲示されたりしています。
グローバル化により、日本の保育環境も「子どもの多様性」を尊重する必要性があります。
ルイーズ・ダーマン・スパークス(Louise Derman-Sparks,1994)は、保育者が「子どもの多様性」に対して適切な介入をしなかった場合、高校生の頃までには、社会的弱者(アフリカ系の人々や女性、老人、障害者)に対する見方のステレオタイプ化が進み、偏見をもちやすいことを実証しています。
多国籍文化共生社会において、今後保育者が「子どもの多様性」に関して、正しい知識、技術、倫理や判断をもって援助することは、保育者の専門性として非常に重要になります。
身近な保育環境には、多様性に関する「環境」が多くあります。
たとえば、保育者が、多言語の絵本、世界の音楽や食の文化について興味を共有したり、地域の図書館や博物館と連携したりと、さまざまな文化の「環境」に日常的に親しみ保育を創造することが、今の保育に求められています。
東京のある私立S園では、コーナーに、多言語絵本(写真2)や様々な人種の人形を設置しています。
また、お散歩の際には、地域にある多国籍のレストランや多文化関連施設に子どもたちと訪問し、地域の多国籍の人々との交流をしています。
幼児期において「異なる文化に触れる」ことは、とても特別で興味深いことでありながら、「異文化を受け入れる」ということはそう簡単ではありません。子どもにとって、母国の言葉の理解が、世界を知る始まりであり、母国の社会について知ることになる一方、他言語を学ぶことが、他国の社会を知るきっかけにもなるのです。
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写真1 筆者が壁面に作成した世界の母国語を表示した「言語」コーナー
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写真2 筆者がスウェーデンの就学前学校で読んでいた絵本
参考文献
『ななめから見ない保育―アメリカの人権カリキュラム』((Louise Derman-Sparks.1994)
