メインコンテンツへスキップ
児童学コラム

最近の子どもの身体活動量は少ない?

執筆者:高橋 和孝(教員ページへ
01_走る子供たち.jpg

日本女子大学児童学科で、実技体育(身体運動)の授業を担当している高橋和孝と申します。

さて、皆さんは「運動は好きですか?」

高校までの間、体育の授業でいろいろな種目に取り組んできたと思います。友達と楽しく身体を動かした思い出もあれば、苦手な種目で授業に出たくなかった日もあったかもしれませんね。

日本女子大学では1年生全員が週に1回、体育の実技授業(身体運動という授業です)を受けます。なぜ大学でも体育を学ぶのでしょうか?

身体を動かすことは、筋力や持久力を高めるだけでなく、やる気や気持ちの元気さにもつながります。さらに、子どものころから良い運動習慣を身につけておくと、体力が向上するだけでなく、生活のリズムや人との関わり方(社会性)も育っていきます。世界保健機関(WHO)は、5~17歳の子どもに対して「1日平均60分以上、中くらいから強めの運動をすること」をすすめています1。しかし、実際には世界の多くの子どもがその基準を満たせていません。

2016年の調査では、世界の11~17歳の子どもの81%が運動不足でした2。特に女子は男子よりも運動量が少ない傾向が続いています。日本も同じです。例えば、1日60分運動できている割合は、小学5年生男子:9.1%,小学5年生女子:16.0%,中学2年生男子:9.7%,中学2年生女子:21.8%という結果が出ています (図1) 3

図1.小学校および中学校の男女における体育授業を除く運動時間の実態(文献3より抜粋).

なぜ運動量が少なくなっているのでしょうか?

大きな理由のひとつは、スマートフォンやタブレットなどのICT機器の使いすぎです3。画面を見て過ごす時間を「スクリーンタイム」といいますが、この時間が年々増えています (図2)。その分、身体を動かす時間は減っているのです。スマートフォンは生活に欠かせない便利な道具ですが、使いすぎると運動不足につながります。まずは1日少しでも画面を見る時間を減らし、身体を動かす時間に置きかえてみましょう。

図2.学習以外におけるスクリーンタイムの実態(文献3より抜粋).

先程述べたように、日本女子大学では1年生全員が週に1回、体育の実技授業(身体運動)を受けます。日本女子大学の創立者・成瀬仁蔵先生は「身体を動かすことは、女性の健康や人格形成にとって大切」と考えました。そのため本学では、創立当初から身体運動を必修科目として続けています。

身体運動の授業のねらいは、健康のために必要な運動習慣を身につけ、生涯にわたって運動を続けられる力を養うことです。加えて、入学してすぐの1年次に行うため、友人づくりやコミュニケーションの場としても役立っています。

授業の内容はクラスによって様々で、球技だけでなく、ジョギング、ヨガ、ピラティス、ダンスなどがあります。選択授業ではクライミングやフィットネス系の授業もあり、幅広い運動に挑戦できます。授業をきっかけに、日常でも運動を続けていけると理想的です。

児童学科に入学する皆さんの多くは、将来幼稚園や保育所などで子どもと関わる仕事に就くと思います。皆さん自身が運動を前向きに楽しむ姿勢を持つことは、とても大切です。なぜなら、先生が楽しそうに身体を動かしていれば、子どもたちも自然と運動が好きになるからです。ぜひ大学生活の中で運動にたくさん取り組み、自分自身が「運動って楽しい!」と感じてください。そして将来、子どもたちにその楽しさを伝えていってほしいと思います。

参考文献

  1. WHO guidelines on physical activity and sedentary behaviour(2025年8月22日参照)
  2. Guthold, R., Stevens, G.A., Riley, L.M., and Bull, F.C. (2020) Global trends in insufficient physical activity among adolescents: a pooled analysis of 298 population-based surveys with 1· 6 million participants. The lancet child & adolescent health, 4(1), 23-35. 
  3. スポーツ庁令和6年度全国体力・運動能力、運動習慣等調査結果(2025年8月21日参照)